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TechnoProducer ビジネスに「効く」知財 Vol.140

TechnoProducer ビジネスに「効く」知財 Vol.140
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■■    TechnoProducer ビジネスに「効く」知財 Vol.140


配信数:約6500 配信実績:2008年8月19日より隔週発行
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■1月以降の関連イベント

●今回のトピック
・「知的財産戦略」(丸島儀一 著)を読む(13)


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「発明塾」は、弊社の登録商標です。

★「ダントツの発明力と知財力」のために~TechnoProducerの知財教育を!

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●今週の一冊
「クルマはかくして作られる」シリーズ(別冊CG) 
 福野礼一郎 著

今回も、弊社主催の「発明塾」で教科書にしている書籍を、1つ紹介したい。


発明塾で「ものづくり」について教える際に、

「携帯電話とクルマの作り方が判っていれば、”ものづくり”について大体
網羅できるから、その2つについて、原理と製造法をしっかり勉強しなさい」

と言っています。携帯電話は定期的にその場で「お古」を分解して、配線基板、
LED、液晶パネル、偏光フィルムやプリズムシートなどについて、その原理や
作り方を詳しく教えています。

例えば、配線基板と液晶パネルをつなぐACF、LED用GaN基板の製造法「MOCVD」、
サファイヤの結晶成長、偏光フィルムの作り方/貼り合わせ方、超薄型ガラスの
作り方/化学強化法などの説明を通じ、携帯電話は日本の製造/要素技術の粋を
集めた製品であることを話すと、多くの大学生が技術にますます興味を持ちます。

このような技術への深い理解と関心が、「発明塾」メンバーが新たな発明を
生み出す「原動力」となっています。

もちろん、携帯電話に用いられているCDMA技術の開発の歴史や知財の動向に
ついても、時間を割いて詳しく取り上げます。知財に関する理解なしに、良い
発明を生み出すことは、不可能です。

「携帯電話」は、ほとんどの大学生が毎日使っているものですので、まさに
「生きた教材」として活用できます。

クルマも分解して解説したいところですが、さすがに・・・。


本書は4冊シリーズで、その名の通り「クルマはこうやって作られている」
という現場の様子や部品の製造法について、写真付きで丁寧に解説しています。

しかも「ファスナー(ニフコ)」「粘着テープ(住友スリーエム)」「防音材
(日本特殊塗料/中外)」「防振ゴム(東海ゴム工業)」(注)のような部品/
部材に至るまで、一つ一つ丁寧に製造現場を取材して取り上げる「手の込み様」。


「技術に興味のある」すべての人に、ぜひ手にとって欲しい本の一つです。


※注)いずれも「クルマはかくして作られる3」より


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本メールマガジンは、技術者の方々、知財担当者、教育担当者の方々に、
ちょっとしたお役立ち情報を、お届けいたします。

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また、弊社の技術者向け知財教育カリキュラムの抜粋を、コラムにしております。
知財部で人材育成をご担当の方、技術者の方、若い部下をお持ちの方に、ご一読
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★★★★★★★★★★ 【定期開催中】『知財塾』 ★★★★★★★★★★★★★★


弊社代表取締役・弁理士の 五丁(大阪工業大学 知的財産学部 客員准教授・漢之光華
グループ顧問※兼務)が、「知財のプロ」を目指す方々と勉強会を行っております。

既に世界経済の中心である中国・アジアで活躍できる知財専門家、実務家を育成します。

・「知財塾」HP
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実践/実戦的な内容とするため、各種事例研究を、精力的に行っております。

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※漢之光華グループは、上海光華特許事務所、上海漢之法律事務所、上海漢光知財データ
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/////////1月以降の知財関連イベント情報///////////////


★知的財産人材育成推進協議会主催 2013年度オープンセミナー(東京)

「グローバル事業戦略に貢献する知財マネジメント人財」と題して、3回のセミナーが
開催されます。

今後の日程は、1月14日 となっております。

詳細は、以下URLをご参照ください。
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★知的財産研究会~これからの知財保護・活用戦略を考える(大阪)

弊社代表の 五丁 が准教授を務めさせて頂いております 大阪工業大学 主催の
「知的財産研究会」が、本年も開催されております。

次回予定は、1月15日 となります。

詳細は、以下URLをご参照ください。
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★K.I.T虎ノ門大学院 設立10周年記念講演(東京)

「グローバル時代の知的財産マネジメント-日米欧を代表するグローバル企業の知財活動」

・日 時: 1月25日(土) 14:00 ~ 16:00
・場 所:  金沢工業大学 虎ノ門キャンパス

詳細は、以下URLをご参照ください。
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★国際知的財産活用フォーラム2014(東京)

『グローバル化する世界経済において、「日本の強みを生かし・創り、
                機会を活かす」立場で、知的財産の活用戦略を考える』

と題して、本年も開催されます。

・日 時: 1月27日(月) 9:30~17:20
・会 場: セルリアンタワー東急ホテル 
      B2F「セルリアンタワーボールルーム」(東京都渋谷区)

詳細は、以下URLをご参照ください。
http://bit.ly/JUDfdl



/////////1月以降の弊社講師セミナー情報///////////////


★1月29日「基礎から学ぶ!技術者のための共同研究契約・秘密保持契約のポイント」(橋本)
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 技術者・研究者が安心して対外関係を構築する為に知っておきたい契約のポイントや注意点に
 ついて、身近な事例で、わかり易く解説!

★2月13日「MBA視点で考える知財戦略~基礎から競争優位の戦略立案、および経営層への提案法」(秋好)
 http://bit.ly/1bYhWR8
 事業優位性を確保する参入障壁の形成法から、市場全体を支配する戦略、経営層への提案法まで!


本年は、多くの方々にセミナーにご参加いただき、誠にありがとうございました。
来年も、より多くの皆様にご参加いただけるようなセミナーを、提案させていただく予定です。

今後とも宜しくお願い申し上げます。



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★★「知的財産戦略」(丸島儀一 著)を読む(13)

前回(12)では、

『「研究開発は権利形成の最初のステップ」であり「研究開始時点から知財を意識して活動する」ことが
重要である』

ことを学んだ。例えば、

「係争になった場合、取りうる方策は、手持ちの資料に大きく制約される」

ため、

「訴訟を意識した、ラボノートの作成/記載方法の指導」

が重要となる。


・「知的財産戦略」(丸島儀一 著)を読む(12)~TechnoProducer ビジネスに「効く」知財 Vol.138
 http://bit.ly/1fQfxcX


今回は、「先使用権」「営業秘密」「ノウハウ」に関して書かれた部分を、見ていきたい。

最初は「先使用権」である。本書では、

「まず、日本における先使用権は日本でしか効果がなく外国には何らの権利も発生しない」P77
「外国での先使用権は各国ごとに得なければならない」P77
「国によって制度が異なるので注意を要する」P77

として、先使用権の注意点/限界を指摘している。

「先使用権は発明を保護するものではない。実施、あるいは実施の準備をしている実施形と
その事業の範囲だけを保護するものである」
「事業が変わったら保護されない」P78

あくまでも、「実施形態」を保護するものであり、「発明」「技術思想」を保護する特許制度
とは異なる点、例外的措置である点を強く述べている。


次に「営業機密」について、

「発明が先使用権で保護されるのが誤解であるのと同じように、営業秘密(技術情報、ノウハウ、
営業情報)が無条件で不正競争法で守られるというのも誤解である」P78

として、注意を促している。例えば、営業秘密が不正競争法で保護される条件は、「非公知性」
「有用性」「秘密管理性」であるが、特に

「厄介なのは秘密管理性」P78

であることは、よく知られている通りである。

「秘密管理性とは、営業秘密となる情報が特定され、特定の人のみが見られるように厳密に管理
されていることを意味する」P78

つまり「情報の特定」と「アクセスの厳密な管理」を満たす必要がある。

例えば、研究者が事業にとって重要な情報に研究中に気づいたとしても、文書として報告され
会社としてそれを営業秘密として特定しなければ、保護の条件を満たさない。研究者が得た「情報」
を迅速かつ明確に(文書として)日々回収し、特定できる仕組みが必要となる。

情報の管理にも、難しい点がある。「営業機密は、それを見られる人を限定し、その人以外が
見られないように管理」(P78)しなければならないが、日本の一般的な研究開発現場のように、
研究レポートが大部屋のキャビネット内のファイルに綴じられているだけでは、たとえ「秘密」
である旨の表示があっても、秘密情報として管理されていることにはならない。


その他、本書では「退職後に守秘義務を負わせることの難しさ」の一例として

「在職中に知り得たすべての秘密情報を対象にしたのでは、法的有効性が疑われる。対象とする
秘密情報を特定する必要がある」P81

ことを挙げ、技術情報を営業秘密として保護する上での、運用上の困難を指摘している。


まとめの部分に、以下の記述がある。

「ノウハウを開示しないで、必要な思想を権利として取るのが最も安全な方法」P82

そして本書では「特許で保護されるのは”技術思想”である」と、繰り返し述べられている。


私は、本書のエッセンスを、

「知財の仕事は、事業を強くするために必要な特許を、如何に取得するか」

であり、

「そのためのポイントは、特許で保護される”技術思想”を如何に抽出/創造するか」

であると、読んでいる。そう考えれば、この部分でも、結局は同じことが触れられているに
過ぎない。皆様は、どのように感じられましたでしょうか。


次回は、研究者の「知財マインド」「知財センス」の高め方について、見て行きたい。



P.S.
年末ということで、本書「解説」P315の 元京セラ社長 西口氏の言葉を取り上げて締めたい。

「丸島氏の交渉は実に巧みで、とにかく特許をうまく使って、キヤノンにとっての武器に
する印象だった。丸島氏の姿勢は特許を資産としてお金を儲けようということではなく、
両社が新素材を活用した事業を効果的に展開できるように、という視点が常に感じられた。」

知財と契約/交渉は、常にセットで考えなければならない、と丸島氏はセミナーや講演で、
繰り返し述べておられる。


『丸島氏は「知財の仕事」を「知的財産経営」と呼べる経営モデルにまで高めた』


何度読み返しても、常に新しい発見がある本です。



※注1)図、ページ数等は、第1刷に基づきます。
※注2)本連載は、弊社独自の解釈に基づくものです。




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ノウハウにより、御社の発明力と知財力を確実に向上、事業に貢献する知財活動の実践につなげます。

・例)「発明の本質把握 セミナー」「事業に貢献する、強い特許創出 eラーニング」


技術者向けだけではなく、知財スタッフ/リーダー育成のためのカリキュラムも、ございます。

・例)「知財リーダー育成セミナー ~ 知財部から社長を!」
   「知財戦略 事例演習 ~ The Bargaining Power」


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①チームの仕事をやり上げる
②新しい仕事を創る
③部下を育てる

「部下を育てるポイント」
①モノを尋ねる
②方針を明確に示す
③権限を移譲する
④感動させる

-松下幸之助

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TechnoProducer ビジネスに「効く」知財 Vol.139

TechnoProducer ビジネスに「効く」知財 Vol.139
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配信数:約6500 配信実績:2008年8月19日より隔週発行
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■12月以降の関連イベント

●今回のトピック
・「国際標準化と事業戦略」(小川紘一 著)を読む(12)


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●今週の一冊
「イシューからはじめよ」安宅和人

発明塾で「必須の参考書」として、講義でも頻繁に取り上げる本の一つ。

実は「発明塾で教えていることって、この本に書いてあること、そのまま
ですよね」という、塾生さん(当時)の一言で知った本です。


今回はこの本から、マービン・ミンスキーがリチャード・ファインマンを
評して述べた一言を、紹介したい。

「質の高いアウトプットを出す」ための考え方として、参考になる。

①仲間の圧力に左右されない
②常に物事の本質を見失わず、希望的観測に頼らない
③物事を表すために、多数の方法を持つ。一つの方法でうまく行かなければ、
さっさと次の方法に切り替える

ミンスキーは、特に③について多くを述べており、とても興味深い。
手段に関する柔軟性が、「天才」の要件である、と。


例えば、

「根拠のはっきりしない、希望的観測に基づいた意見には、流されない」
「目的(本質)を常に見失わず、手法には、こだわらない」

のようにアレンジすると、より具体的な「行動基準」になり、日々の活動で
実践可能になります。


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弊社代表取締役・弁理士の五丁龍志(大阪工業大学 知的財産学部 客員准教授・漢之光華
グループ顧問※兼務)が、「知財のプロ」を目指す方々と勉強会を行っております。

既に世界経済の中心である中国・アジアで活躍できる知財専門家、実務家を育成します。

・「知財塾」HP
 http://bit.ly/1a34We3

実践/実戦的な内容とするため、各種事例研究を、精力的に行っております。

・「知財力育成のための事例分析」
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詳細は以下までお問い合わせください。
・連絡先 IP-seminar@techno-producer.com


※漢之光華グループは、上海光華特許事務所、上海漢之法律事務所、上海漢光知財データ
科学技術有限会社、上海漢光知財鑑定事務所からなり、現在中国国内で有数の「知的財産権
代理業務+法律業務+特許データサービス+鑑定業務」を行う会社です。
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/////////12月以降の知財関連イベント情報///////////////


★日本ライセンス協会「月例研究会」(大阪)

・日 時: 12月17日(火)14:00-17:00
・演 題: 「企業における知的財産」-本業を支える知的財産活動-
・講 師: 青山 高美 氏 (名城大学法科大学院非常勤講師、元トヨタ知的財産部長)
・会 場: 大阪科学技術センター 7F 701号室

詳細は、以下URLをご参照ください。
http://bit.ly/14FGFXT


★知的財産人材育成推進協議会主催 2013年度オープンセミナー(東京)

「グローバル事業戦略に貢献する知財マネジメント人財」と題して、3回のセミナーが
開催されます。

今後の日程は、1月14日 となっております。

詳細は、以下URLをご参照ください。
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★知的財産研究会~これからの知財保護・活用戦略を考える(大阪)

弊社代表の 五丁 が准教授を務めさせて頂いております 大阪工業大学 主催の
「知的財産研究会」が、本年も開催されております。

次回予定は、1月15日 となります。

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★K.I.T虎ノ門大学院 設立10周年記念講演(東京)

『グローバル時代の知的財産マネジメント-日米欧を代表するグローバル企業の知財活動-』

・日 時: 1月25日(土) 14:00 ~ 16:00
・場 所:  金沢工業大学 虎ノ門キャンパス

詳細は、以下URLをご参照ください。
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/////////12月以降の弊社講師セミナー情報///////////////


★12月16日「“特許性”と“問題特許”の適切な判断方法~目的に応じた特許公報の
        読み解き方~」(湯浅)
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 「特許性」「問題特許」の判断を、簡単な演習を通じて身につけて頂きます!

★1月29日「基礎から学ぶ!技術者のための共同研究契約・秘密保持契約のポイント」(橋本)
 http://bit.ly/1aqLJ48
 技術者・研究者が安心して対外関係を構築する為に知っておきたい契約のポイントや注意点に
 ついて、身近な事例で、わかり易く解説!

皆様のご参加を、講師一同、心よりお待ちしております。



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★★「国際標準化と事業戦略」(小川紘一 著)を読む(12)

前回(11)では、これまでのまとめを行った上で、

『標準化戦略において「競合相手」になるのは「同業他社」ではなく、「バリューチェーン」上の他社であり、
取引先であり』

『その打ち手をしっかり分析し、「先回り」し「対抗」することこそ、これからの知財戦略の本質となる』

ことを学んだ。


・「国際標準化と事業戦略」(小川紘一 著)を読む(11)~TechnoProducer ビジネスに「効く」知財 Vol.137
 http://bit.ly/18E8ULe


今回から、第5章「パソコン産業に見るアメリカ企業の標準化戦略」を読み進め、この事例を通じてさらに
理解を深めて行きたい。

すでに多くの方が御存知の通り、本章で取り上げられている「IBM」および「インテル」の事例は、製品の
モジュール化が進む中で、部品メーカーがどのように製品全体/業界の支配することが出来るかという、
標準化第2モデルの典型的事例である。

本メールマガジンでは、本書の内容に加えて、慶応義塾大学ビジネススクール(KBS) 岩本教授を交えて
毎月開催している「国際標準化と事業戦略勉強会」(幹事:弊社 橋本)での討議内容や知見も交え、
パソコン業界の変遷を整理する。

既に取り上げた携帯電話カメラモジュールと、現在でも日本企業が優勢なデジカメを並置してみれば(注3)、
標準化戦略は技術に依存するものではなく、事業戦略/事業のシナリオ、つまり経営上の意思によって
どのようにでも出来ることが、理解いただけるであろう。


今回は、パソコン事例の第一回として、インテルの事例を参考にしながら、知財を活用した標準化戦略の
「打ち手」を整理したい。

1)ブラックボックス領域の維持
まずインテルの競争優位の源泉は、最先端の技術開発に支えられたMPUのアーキテクチャであり、MPUを
外部から切り離す役割を持った、NorthBridgeと呼ばれるインターフェース領域である。このインター
フェース領域により、外部機器との互換性を保ったまま、常に最新の技術をMPUに投入し、製品全体の
技術革新をリードすることが出来る。MPUに関する技術をブラックボックスにしたまま進化させ続ける
には、このインターフェース領域が重要となってくる。

NorthBridgeとMPUの関係については、例えばP132 図5.3またはP139 図5.6に詳しい解説がある。歴史的
経緯は今後改めて追うが、例えば P130図5.2に、IBMがPCを企画した当初のアーキテクチャ(構造)が
示されている。インテルとは異なりIBMは、完成品メーカーとしてPC全体を支配するために、全体が強い
相互依存性を持つ構造にしている事がわかる。


2)標準化=無力化による競争/低コスト化
これは、バリューチェーン全体のコストを下げて、自社モジュールの価格を維持するための打ち手である。

上流側では、MPU製造コストの低減のために、半導体製造プロセスや設備、原料となるSiウエハーの標準化を、
積極的に行っている。半導体産業は、巨額の投資を必要とする設備産業であるため、設備側に競争力/
交渉力が残り、価格が高騰することは避けなければならない。

また、下流側ではマザーボードの製造ノウハウを台湾を中心とするアジアメーカーに提供し、自社MPUを
使ったマザーボードを、安価に大量普及させている。最終製品価格を下げて普及を促進し、他方で、
そこに占める自社モジュールの価格を維持する、という「普及と高価格の維持という矛盾」をブレーク
スルーするための手法である。

メモリーやHDD等の周辺機器についても、価格を下げるためにインターフェースの標準化を主導している。
互換性の規準が明確であれば、競合が次々と参入し価格は自然と下がる。ユーザーから見たPCのコストには、
周辺機器も含まれる。インテルは「PCを利用するコスト」を極限まで下げることで普及を早め、「その中で
自社のモジュールだけが価格を下げずに済む」ための方法を考え、確実に実行している。

マザーボードの普及については、P146 図5.9にその状況が示されており、MPUの価格は維持されている一方、
周辺機器の価格が下落していることは、P145 図5.8からわかる。


3)ブラックボックス領域と、無力化領域の切り分け/その意味
振り返りも兼ねて、インテルが「ブラックボックス領域と無力化領域」をどのように設定し、どう競争力の
維持と収益につなげているのかを見てみよう。

本事例における「ブラックボックス領域と無力化領域」については、P144 図5.7またはP147 図5.10が、
わかりやすい。あわせて参照いただきたい。

前回(11)で、標準化第2モデルのポイントは、
『「無力化」による代替技術/競合の排除と、付加価値の収奪』
であることを学んだ。

言い換えれば
「バリューチェーン間での、技術進化のイニシアチブ争い」
に勝つための手法である。

インテルは、バリューチェーン上のプレーヤーを価格競争に追いやり、PCの技術進化を主導できるだけの
余力を与えないようにしている。その結果、インテルのみが製品全体の技術革新を牽引し続けることができ、
高収益を長期にわたり維持している。



以上をまとめると、製品/ビジネスモデルを「知財/標準化戦略」の視点から考える際の、指針が見える。

・ブラックボックス領域を、どこに定めればよいか
・インターフェース領域を、どこに定めればよいか
・インターフェース領域より下流(もしくは上流)を、如何に競争状態に置き、価値を下げるか


繰り返しであるが「普及させるために、自社領域以外の領域の価格を下げさせる」という、「バリュー
チェーン間の競合」になっていることが、「標準化戦略」を含めた知財戦略/事業戦略のポイントである。

同業他社を排除する、という考え方を「古典的な競争戦略」とすると「現代の競争戦略」と言える。
戦うべき相手が変わっているのが、現在の競争の特徴である。「協力する相手を増やす」ことで戦いを
有利に進める、という、一見わかりにくい構造になっている。


次回は、インテルとIBMの歴史を紐解き、上記のような戦略に至った経緯を見て行きたい。



※注1)図、ページ数等は、第2刷に基づきます。

※注2)本稿は、弊社が主催する「国際標準化と事業戦略研究会」の研究成果に基づくものです。無断転載、
引用を禁止します。研究会では、本書には取り上げられていない様々な業界に、知財戦略/標準化戦略を
駆使した事業戦略はどうあるべきか、今後も事例研究を進め、学会等で発表する予定です。お楽しみに。

※注3)P196-221 および、以下参照。
「TechnoProducer ビジネスに「効く」知財 Vol.135」
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技術者向けだけではなく、知財スタッフ/リーダー育成のためのカリキュラムも、ございます。

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を追求し、自分の目線は下げない」

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