TechnoProducer ビジネスに「効く」知財 Vol.154
TechnoProducer ビジネスに「効く」知財 Vol.154
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■■ TechnoProducer ビジネスに「効く」知財 Vol.154
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配信数:約6800 配信実績:2008年8月19日より隔週発行
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■7月以降の関連イベント
●今回のトピック
・「 国際標準化と事業戦略」(小川紘一著)を読む(19)
★「発明塾」とは? http://www.techno-producer.com/case/invention.html
「発明塾」は、弊社の登録商標です。
★「ダントツの発明力と知財力」のために~TechnoProducerの知財教育を!
ご利用者の声~ http://www.techno-producer.com/voice/
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●今週の一冊
「ビジネスマンのための『発見力』養成講座」小宮 一慶
前回に引き続き 小宮 氏の本となりますが、本書は、入社2-3年目の方を
目安に、お読みいただきたい本です。経験的に、
「言われたことをやる」「言われてからやる」
を卒業して、
「先取りし、自分で提案し、結果を出す」
ことが”そろそろ”求められる層、と言い換えてもよいでしょう。
ここで必要になるのが、「発見力」です。
では、発見とは何か。
「見えてなかったものが、見えること」
です。正確には、
「他の人には見えていないが、自分には見えた」
になるでしょうか。単に「他の人に見えていたものが、自分に見えていなかった」
だけなら、その発見は単なる「自己満足」です。
見ているが「見えていない」。これは、人間の認知機能の限界です。
①関心を持つ
②仮説を持つ
ことで、見えるようになります。
具体的には、
①関心を持つ
切り口を持ち、分解して絞って見る。「黒い服」の女性に注目する、等
②仮説を持つ
仮説を基に、目の前の物事について「判断」していく。YESかNOか、等
と、されています。
なぜだろうか、本当にそうか、など、常に口ずさみながら「見る」と
よいかもしれません。
他、前提を疑う、疑問を持った理由を探す、全体を見通せる一点を探す、
などの手法が紹介されています。
これらの考え方の一部は、「Critical Thinking」と呼ばれます。
あと「思想をもった人間のみを抜擢する」と書かれています。これは、
下名の経験的にも「なるほど」という感じがします。
「思想」=「普遍性のある判断基準」
と言い換え、定義すると、わかりやすいでしょうか。
このように、常に言葉を定義し、概念を明確化していくことも、一つの
テクニックかもしれません。
「なんとなく分かったつもり」
にしている時とは、異なる景色が見えてきます。
「その言葉、自分は本当に分かっているのか」
でしょうか。
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本メールマガジンは、技術者の方々、知財担当者、人材育成/教育担当者の方々に、
ちょっとしたお役立ち情報を、お届けいたします。
お申し込みは、mail@techno-producer.comまで。
また、弊社の技術者向け知財教育カリキュラムの抜粋を、コラムにしております。
知財部で人材育成をご担当の方、技術者の方、若い部下をお持ちの方に、ご一読
いただきたく。
★コラム「ビジネスと知財」 http://www.johokiko.co.jp/column/column_takahisa_kusuura.php
お知り合いの方、知財部門の方、技術者の方、企画部門・人事教育部門の方に、
ぜひご転送、ご紹介ください!
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弊社取締役・弁理士の 五丁(大阪工業大学 知的財産学部 客員准教授・漢之光華
グループ顧問※兼務)が、世界で活躍できる「知財のプロ」を目指す方々と、
勉強会を行っております。
・「知財塾」HP
http://bit.ly/1a34We3
より実践/実戦的な内容とするため、事例研究も行います。
・「知財力育成のための事例分析」
http://bit.ly/12VMaSY
参加ご希望、詳細は、以下までお問い合わせください。
・連絡先 info@techno-producer.com
※ 漢之光華グループHP http://bit.ly/1702oti
<途中割愛>
★★「国際標準化と事業戦略」(小川紘一 著)を読む(19)
前回(18)では、デジカメの事例を基に、
「デジタルカメラ自体は、広く素早く普及させたいが、その市場は、自分たちで独占し、
圧倒的な収益を上げたい」
という経営上の「相反する」要求に対して、デジタルカメラ業界が出した一つの答えが、
「普及のための標準化」と「差別化技術のブラックボックス化」
であったことを学んだ。
また、携帯電話用カメラモジュールとの比較から、同じような技術であっても、
「自社が、どういう技術を持っているのか、調達できるのか」
「業界構造は、どうなっているのか、どのようになると考えるのか」
などにより、「標準化」を仕掛ける部分も異なってくる、ことも学んだ。
・「国際標準化と事業戦略」(小川紘一 著)を読む(18)
~TechnoProducer ビジネスに「効く」知財 Vol.152
http://technoproducer.blog84.fc2.com/blog-entry-165.html
今回は、P223以降で取り上げられている、三菱化学の「記録型DVD用AZO色素」の事例を
見ていきたい。
「あんなに難しい技術を、日本以外の国が作れるはずがない」P224
と言われた記録型DVDメディアであったが、結局はCD-Rと同様に、台湾、インド、
中東の企業が参入するにつれ、価格下落→日本企業のシェア低下→撤退となっている
(P225、図9.1)。この厳しい戦いを勝ち抜いたのが、三菱化学である(P231、図9.5)
本事例は、以前に一度、経済産業省の資料を基に、簡単に取り上げている。
・「国際標準化と事業戦略」(小川紘一 著)を読む(8)
~TechnoProducer ビジネスに「効く」知財 Vol.131
http://bit.ly/1a8yEMH
これを踏まえて、新しい読者の方はもちろん、以前からの読者の方にも有意義な議論と
なるように、少し視点を変えて、本事例を読み進めたい。
知的財産戦略にせよ、標準化にせよ、目的はズバリ「出来るだけ高い収益が上がるように
すること」である。全ての活動を、常に「経営目標と結び付けて」議論し、理解しておく
ことが、極めて重要である。
この「収益」が上がる仕組みは、よく、ビジネスモデル(以下BM)と呼ばれる。
では、今回の三菱化学のDVD用色素に関する「知財」「標準化」戦略の背景にある「BM=
収益が上がる仕組み」は、どのようになっているのか、少し考えてみる。
ある製品から生み出される収益は、どのようにして決まるのか。いろいろな説明方法が
考えられるが、仮に以下のように「因数分解」してみると、どうか。
「ある製品により生み出される収益 = 製品一つ当たりの利益 x 販売数量」
至極単純であり、「利益の出る商品」を「数多く売れ」ばよい、となる。
少し堅苦しく言い換えると、「高い利益率を維持し」て、「売上高を伸ばす」。
堅苦しすぎました。
では、この2つの説明の「あいだ」を、取って
「利益率の高い商品」を「数多く売る」こと
にしましょう。
今回の「記録型DVD用AZO色素」の例では、
「普及するもの = DVDプレーヤー or DVDドライブ(ライトストラテジー)」
にすり合わせられた、「他者にはつくれない」自社の独自製品
「収益源 = AZO色素+スタンパー」
が、「勝手に売れていく」ことで、「利益率の高い商品」を「数多く売る」が実現
している。
重要なことは、「数多く売る」ための仕組みと、「利益率を高くする」仕組みが、
それぞれ別の部分に組み込まれていること。
くどいかもしれませんが、とても重要なことですので、もう少しだけ、詳しく見たい。
三菱化学のDVDに関する知財・標準化戦略の本質は、P229の図9.3に示されている。
繰り返しになるが、この図で強調されているのも
「利益の源泉を守る」+「普及を早める(大量普及)」
の2重構造である。本事例の場合、利益の源泉を守るのは、三菱化学が特許を保有
する「AZO色素」であり、AZO色素の塗布に最適設計された「精密原盤(スタンパ)」
である。
たとえば、三菱化学のDVDスタンパに関する特許には、
「追記型DVDの溝深さを、内周から外周に向かって深く・・・(中略)・・・する
ことで、色素の溶液をスピンコートする際の、膜厚の均一性を実現する」
とする技術思想が、開示されている。しかし、設計上の細かいパラメーターは、
秘匿されている。
このように、利益の源泉は「特許」と「ノウハウの社内管理」で保護されている。
重要なことは、「記録型DVD」すべてに関して特許やノウハウで保護するためには、
多くの特許取得をはじめとした、大きな投資を必要とするが、色素とスタンパに
限れば、必要な投資も限定される、ということ。三菱化学の独自性はそのAZO色素に
あるわけなので、
「圧倒的な強み」
にフォーカスすることで、「特許という投資に対する収益」が最大化される。
弊社が提唱する知財戦略の「第一の鉄則」は、「ROI(投資対収益率)」を高める、
である。
これは、「知財権を有効に活用することで、技術投資に対する収益を高める」という
考え方であるが、同じロジックで、「知財権への投資の、収益への貢献度を高める」
ように事業戦略を立てる必要がある、と考えている。
三菱化学は、AZO色素とスタンパに注力し「ここさえ守れば、圧倒的な収益率が維持
できる」部分を作った。もともと技術的にも強く、ノウハウもあり、更に特許も固めて
いる。「利益率を高める」部分として、最適である。
上記のような鉄則と、ビジネスモデルに関する基本的な理解を踏まえれば、本書で
取り上げられているさまざまなケースも、より理解しやすい。
弊社では、勉強会や発明塾、弊社講師が担当している各大学の講義で、本書のさまざまな
ケースについて、日々議論を積み重ねている。
それらが、弊社の「他を寄せ付けない圧倒的な」教育力の源泉になっている。
次回も、紙上討議という形で、引き続き「三菱化学のDVD色素」に関する、知財・標準化
戦略の理解を深めていきたい。
※注1)図、ページ数等は、第2刷に基づきます。
※注2)本連載は、弊社独自の解釈によるものです。
※注3)本稿は、弊社が主催する「国際標準化と事業戦略研究会」の研究成果に基づくものです。
無断転載、引用を禁止します。研究会では、本書には取り上げられていない様々な業界の、
知財戦略/標準化戦略を駆使した事業戦略はどうあるべきか、今後も事例研究を進め、学会等で
発表する予定です。
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現場で活躍しています。
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その他、各種ご相談、教育カリキュラム、教育内容、教材に関するお問い合わせも、
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「人生とは、毎日毎時間の連続である。今日を捕まえよう、現実から逃げるな」
‐D.カーネギー
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▼周りの方に、ご紹介ください
▼メールアドレス変更、配信停止は、mail@techno-producer.comまで
▼HP http://www.techno-producer.com/
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■7月以降の関連イベント
●今回のトピック
・「 国際標準化と事業戦略」(小川紘一著)を読む(19)
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●今週の一冊
「ビジネスマンのための『発見力』養成講座」小宮 一慶
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目安に、お読みいただきたい本です。経験的に、
「言われたことをやる」「言われてからやる」
を卒業して、
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ことが”そろそろ”求められる層、と言い換えてもよいでしょう。
ここで必要になるのが、「発見力」です。
では、発見とは何か。
「見えてなかったものが、見えること」
です。正確には、
「他の人には見えていないが、自分には見えた」
になるでしょうか。単に「他の人に見えていたものが、自分に見えていなかった」
だけなら、その発見は単なる「自己満足」です。
見ているが「見えていない」。これは、人間の認知機能の限界です。
①関心を持つ
②仮説を持つ
ことで、見えるようになります。
具体的には、
①関心を持つ
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②仮説を持つ
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と、されています。
なぜだろうか、本当にそうか、など、常に口ずさみながら「見る」と
よいかもしれません。
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これらの考え方の一部は、「Critical Thinking」と呼ばれます。
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「思想」=「普遍性のある判断基準」
と言い換え、定義すると、わかりやすいでしょうか。
このように、常に言葉を定義し、概念を明確化していくことも、一つの
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★★「国際標準化と事業戦略」(小川紘一 著)を読む(19)
前回(18)では、デジカメの事例を基に、
「デジタルカメラ自体は、広く素早く普及させたいが、その市場は、自分たちで独占し、
圧倒的な収益を上げたい」
という経営上の「相反する」要求に対して、デジタルカメラ業界が出した一つの答えが、
「普及のための標準化」と「差別化技術のブラックボックス化」
であったことを学んだ。
また、携帯電話用カメラモジュールとの比較から、同じような技術であっても、
「自社が、どういう技術を持っているのか、調達できるのか」
「業界構造は、どうなっているのか、どのようになると考えるのか」
などにより、「標準化」を仕掛ける部分も異なってくる、ことも学んだ。
・「国際標準化と事業戦略」(小川紘一 著)を読む(18)
~TechnoProducer ビジネスに「効く」知財 Vol.152
http://technoproducer.blog84.fc2.com/blog-entry-165.html
今回は、P223以降で取り上げられている、三菱化学の「記録型DVD用AZO色素」の事例を
見ていきたい。
「あんなに難しい技術を、日本以外の国が作れるはずがない」P224
と言われた記録型DVDメディアであったが、結局はCD-Rと同様に、台湾、インド、
中東の企業が参入するにつれ、価格下落→日本企業のシェア低下→撤退となっている
(P225、図9.1)。この厳しい戦いを勝ち抜いたのが、三菱化学である(P231、図9.5)
本事例は、以前に一度、経済産業省の資料を基に、簡単に取り上げている。
・「国際標準化と事業戦略」(小川紘一 著)を読む(8)
~TechnoProducer ビジネスに「効く」知財 Vol.131
http://bit.ly/1a8yEMH
これを踏まえて、新しい読者の方はもちろん、以前からの読者の方にも有意義な議論と
なるように、少し視点を変えて、本事例を読み進めたい。
知的財産戦略にせよ、標準化にせよ、目的はズバリ「出来るだけ高い収益が上がるように
すること」である。全ての活動を、常に「経営目標と結び付けて」議論し、理解しておく
ことが、極めて重要である。
この「収益」が上がる仕組みは、よく、ビジネスモデル(以下BM)と呼ばれる。
では、今回の三菱化学のDVD用色素に関する「知財」「標準化」戦略の背景にある「BM=
収益が上がる仕組み」は、どのようになっているのか、少し考えてみる。
ある製品から生み出される収益は、どのようにして決まるのか。いろいろな説明方法が
考えられるが、仮に以下のように「因数分解」してみると、どうか。
「ある製品により生み出される収益 = 製品一つ当たりの利益 x 販売数量」
至極単純であり、「利益の出る商品」を「数多く売れ」ばよい、となる。
少し堅苦しく言い換えると、「高い利益率を維持し」て、「売上高を伸ばす」。
堅苦しすぎました。
では、この2つの説明の「あいだ」を、取って
「利益率の高い商品」を「数多く売る」こと
にしましょう。
今回の「記録型DVD用AZO色素」の例では、
「普及するもの = DVDプレーヤー or DVDドライブ(ライトストラテジー)」
にすり合わせられた、「他者にはつくれない」自社の独自製品
「収益源 = AZO色素+スタンパー」
が、「勝手に売れていく」ことで、「利益率の高い商品」を「数多く売る」が実現
している。
重要なことは、「数多く売る」ための仕組みと、「利益率を高くする」仕組みが、
それぞれ別の部分に組み込まれていること。
くどいかもしれませんが、とても重要なことですので、もう少しだけ、詳しく見たい。
三菱化学のDVDに関する知財・標準化戦略の本質は、P229の図9.3に示されている。
繰り返しになるが、この図で強調されているのも
「利益の源泉を守る」+「普及を早める(大量普及)」
の2重構造である。本事例の場合、利益の源泉を守るのは、三菱化学が特許を保有
する「AZO色素」であり、AZO色素の塗布に最適設計された「精密原盤(スタンパ)」
である。
たとえば、三菱化学のDVDスタンパに関する特許には、
「追記型DVDの溝深さを、内周から外周に向かって深く・・・(中略)・・・する
ことで、色素の溶液をスピンコートする際の、膜厚の均一性を実現する」
とする技術思想が、開示されている。しかし、設計上の細かいパラメーターは、
秘匿されている。
このように、利益の源泉は「特許」と「ノウハウの社内管理」で保護されている。
重要なことは、「記録型DVD」すべてに関して特許やノウハウで保護するためには、
多くの特許取得をはじめとした、大きな投資を必要とするが、色素とスタンパに
限れば、必要な投資も限定される、ということ。三菱化学の独自性はそのAZO色素に
あるわけなので、
「圧倒的な強み」
にフォーカスすることで、「特許という投資に対する収益」が最大化される。
弊社が提唱する知財戦略の「第一の鉄則」は、「ROI(投資対収益率)」を高める、
である。
これは、「知財権を有効に活用することで、技術投資に対する収益を高める」という
考え方であるが、同じロジックで、「知財権への投資の、収益への貢献度を高める」
ように事業戦略を立てる必要がある、と考えている。
三菱化学は、AZO色素とスタンパに注力し「ここさえ守れば、圧倒的な収益率が維持
できる」部分を作った。もともと技術的にも強く、ノウハウもあり、更に特許も固めて
いる。「利益率を高める」部分として、最適である。
上記のような鉄則と、ビジネスモデルに関する基本的な理解を踏まえれば、本書で
取り上げられているさまざまなケースも、より理解しやすい。
弊社では、勉強会や発明塾、弊社講師が担当している各大学の講義で、本書のさまざまな
ケースについて、日々議論を積み重ねている。
それらが、弊社の「他を寄せ付けない圧倒的な」教育力の源泉になっている。
次回も、紙上討議という形で、引き続き「三菱化学のDVD色素」に関する、知財・標準化
戦略の理解を深めていきたい。
※注1)図、ページ数等は、第2刷に基づきます。
※注2)本連載は、弊社独自の解釈によるものです。
※注3)本稿は、弊社が主催する「国際標準化と事業戦略研究会」の研究成果に基づくものです。
無断転載、引用を禁止します。研究会では、本書には取り上げられていない様々な業界の、
知財戦略/標準化戦略を駆使した事業戦略はどうあるべきか、今後も事例研究を進め、学会等で
発表する予定です。
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